すずめの戸締まりに登場する猫のダイジンとサダイジンは、災害を引き起こす原因とされる”ミミズ”が奔走するのを封じるための要石。白くて小さな猫が西の要石・ダイジンで、黒くて大きな猫が東の要石・サダイジンです。
東のサダイジンが頭を、西のダイジンが尻尾を抑え、2つの要石が対になり”ミミズ”を抑える役目があります。
そして最後は2匹とも要石に戻り、ダイジンはすずめの手によって、サダイジンは草太の手でミミズに刺され、開かれた後ろ戸から出ていこうとするミミズを鎮める役割を果たしました。
ここでは、すずめの戸締まりに登場するダイジンとサダイジンの関係や、最後どうなったかを解説します。
”ミミズとは?”
この世の裏側「常世(とこよ)」に居て、意思もなくうごめく巨大な力であり、常世に通じる「後ろ戸」が開くと、そこから現世(うつしよ)に噴き出し、その土地の精気を吸い上げて膨張、地上に倒れ込むことで巨大な地震を引き起こすものです。
その姿は、草太のような「閉じ師」や特別な人間、カラスなどの動物には見ることができますが、一般の人々にはその存在すら気づかれません。
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すずめの戸締まりのダイジンとサダイジンの関係は?
ダイジンはミミズの尻尾を抑える西の柱、サダイジンは頭お抑える東の柱としての役割があります。なので本来なら、生きた猫の姿で互いに対面することはありません。
映画の後半、はじめてダイジンがサダイジンと対面した時、「シャー!」といって威嚇してましたね。きっと、サダイジンに会うのがはじめてだったのでしょう。
そして、ダイジンはサダイジンに飛びかかりますが、あっさりと取り押さえられて咥えられてしまいました。体格の違いもありますが、力関係・地位的・経験値でもサダイジンのほうがダイジンより上であることが伺えます。
その後ダイジンは、サダイジンにお腹を見せて毛づくろいしてもらってましたから、短いやり取りの中で、自分の立場をわきまえたのでしょうね。
ダイジンの正体:西の柱
ダイジンは、すずめが住む宮崎県に置かれた要石。すずめが何気なく抜いてしまい、白い猫に変身しました。両手に収まるほどの小さな体で、ちょうど子猫のようですね。
”ダイジン”という名前は、自分から名乗ったわけではありません。
九州から逃げ出した後、たくさんの人たちに目撃され、白いヒゲが上向きにカールして、昔の”大臣”に似ていることから、自然とダイジンと呼ばれるようになりました。
ダイジンの行動は、SNSやニュースでも話題になりましたが、これは意図的にしていたことと考えられます。
各地でダイジンが目撃されることで、すずめと草太に「今どこにいるか?」を教えて後を追わせ、後ろ戸の開く場所へと案内していたのです。
また新海誠監督はダイジンの存在に関して、「子どもの神様のイメージ」と説明しています。
愛情が欲しい年頃に要石になったダイジンは、すずめに抜かれたことで「要石としての使命は分かっているが、すずめと遊びたい」という、シンプルな思いを抱いていたことも語っています。
映画の原作によると、草太の家(東京のアパート)にあった古文書の中に、ダイジンの由来が記されています。
江戸時代後期の嘉永7年(1854年)に当時の閉じ師によって記された「寅ノ大変 白要石」には、「寅ノ大変」と呼ばれる連続した巨大地震を引き起こした災いを鎮めるために、三輪山(現在の奈良県桜井市)の震災遺児が世を嘆いて立ち上がり、閉じ師の石上(いそのかみ)氏に要石の役目を申し出て「白き右大神」と呼ばれる新たな要石になったという逸話が残されている。
ピクジグ百科事典「要石(すずめの戸締まり)」より
映画の中でダイジンは、「すずめ やさしい すき」「すずめ すごーい」「ムリ ダイジンはもう 要石じゃない」と、会話も子どものようなしゃべり方をしていましたね。
”ダイジン”というのも案外、本来の呼び名に近いことにも驚きです。
サダイジンの正体:東の柱
サダイジンは、東京にある皇居の地下にあった要石。ダイジンと同様、子どものような声で人間の言葉を話してましたが、その姿は大型犬のように大きく、どことなく貫禄を感じますね。
サダイジンは誰かによって抜かれたわけではありません。自らの意思で、すずめや草太・ダイジンが東京に到着するのを待っていたかのようです。
2つの要石は時代によって、必要とされる場所に人の手によって移し替えられる必要があります。
なので、西の要石がすずめによって抜かれたのは偶然ではなく、もしかしたらその時が来たからなのかもしれませんね。
最初にサダイジンが姿を現したのは東京でしたが、このときはすずめたちには会っていません。そして次に登場したのは、宮城県の道の駅でした。瞬間移動したのでしょうか?
宮城県ですずめたちと対面した時、サダイジンは一瞬、環さんに取り憑いたように見えましたね。
これは個人的な見解ですが、もしかしたら車で宮城に向かう時、姿と気配を消しつつ車に居た、あるいはすでに環さんに取り憑いていたとも考えられます。
車中での会話や心の内を知り、環さんに本心を言わせたのかもしれませんが…定かではありません。ですが、環さんとすずめが本音でぶつかった事によって、その関係性が良くなったことは確かです。
サダイジンは見かけだけでなく、ミミズに立ち向かう姿からも、ダイジンよりも神性を帯びていると感じられます。
ダイジンとサダイジンは最後どうなった?
震災にあった宮城の実家に到着すると、すずめは家の庭に埋めた「宝箱」の中から日記帳を見つけ、昔の記憶を取り戻し、4歳の時に「常世(とこよ)」に迷い込んだことを思い出します。
そして、後ろ戸を探しますが、この時ダイジンがすずめにその場所を教えます。ここまでダイジンは、すずめを導くために案内していたのです。
扉を開くとそこには「常世(とこよ)」が見え、すずめとダイジン・サダイジンはその中に飛び込んでいきました。
最後は要石に戻った
すずめの見た常世は、4歳の時に経験した燃えさかる故郷の姿。
そこでミミズは暴れ膨張し、すずめたちが通ってきた後ろ戸から出ていこうとしています。これに対してサダイジンは、一瞬で家ほどの巨体になってミミズに立ち向かいます。
一方のダイジン、すずめと一緒に草太を助け、「すずめの手で元に戻して」と言って要石に戻りました。そして、すずめの手によってミミズに刺されたのです。
最後にサダイジンも要石となり、草太の手によってミミズに刺され動きを鎮めることに成功しました。
なぜネコなのか?
日本には昔から猫を祀る神社があり、「神あるいは神の使い」とされる風習があります。映画の公式パンフレットの中でも、「古来から猫は異世界への案内役というイメージ」があると記されてることから、猫が選ばれたのかもしれません。
また、「すずめの戸締まり」は、宮崎駿監督の映画「魔女の宅急便」の影響を強く受けているといわれています。
魔女の宅急便にも、黒猫のジジや白猫のリリーが登場しますね。ちなみに、リリーはジジの恋人でメスですが…
すずめたちが東京を出発した直後、車に流れた曲も「ルージュの伝言」でしたね。この曲は後から付け加えられたものだそうですが、この選曲からも「魔女の宅急便」の影響を感じられます。
さらに、新海誠監督は大の猫好きで知られています。「すずめの戸締まり」の製作中、2匹の保護猫を譲り受け、名前もスズメとツバメと名付けたというほどです。
まとめ
映画「すずめの戸締まり」に登場するダイジンとサダイジンは、お互いに対となって災いを鎮めるための要石。ダイジンが西の柱としてミミズの尻尾、サダイジンが東の柱としてミミズの頭を抑えていました。
互いに協力してミミズを抑えるため、対面することはなかったと思われますが、サダイジンのほうは貫禄があり、ダイジンより上の立場にあると考えられます。
最後にダイジンはすずめによって、サダイジンは草太の手によってミミズに刺され、災いを鎮めるという本来の役目を果たしました。
「すずめの戸締まり」は震災というデリケートな題材の作品でした。ミミズを災の原因になる存在として描いていますが、決して退治されることはありませんでしたね。
日本は、人の力では対処できない自然災害が多くあり、いつどこでどんなことが起きるか分かりません。理不尽な終わり方をしても、そうでなくても現実を受け入れなければならないのです。
ダイジンの「今からたくさん人が死ぬ、繰り返すねー」と言った言葉は、真実であり、私たち一人一人が向き合わなければならない課題なのかもしれません。
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